主に合唱曲を作曲しています。

「4つの追憶の曲」から「1. 夢」の曲解説

2020/03/07
作品解説 0

2020年度の全日本合唱コンクールの課題曲となった「2. 骨」の解説を、4月に発刊される合唱の雑誌「ハーモニー」192号に寄稿させていただきました。
他の課題曲の解説も掲載される予定だそうですので、コンクール出場を検討されている合唱団の皆様は、ご購入の上でお読みいただければ幸いです。

組曲中の課題曲以外の曲についても解説したいと思い、記事を書かせていただきます。
この記事では「1. 夢」の曲解説をします。
組曲全体を演奏していただく際に参考にしていただければ、大変喜ばしく存じます。

※コンクール用に提出した際の楽譜では、この曲だけ記載ミスで小節数が1つ分ずれています。
以下では正しい小節数に基づいて解説を記載しておりますので、お手数ですが楽譜に記載されている小節数を1つ増やした上でご参照ください。

1. 作品解説

浮遊感のあるピアノ伴奏が特徴的な曲です。
20世紀初頭の、いわゆる印象主義的音楽をイメージして作曲しました。
組曲の中では最初に作った曲で、私としては一番出来がいい曲だと思っています。
合唱コンクールの課題曲にはこの曲を自薦していたのですが、結果的には別の曲が選ばれることとなりました。
私好みの雰囲気の曲なので、演奏会で是非一度取り上げていただきたい所存です。

曲自体は、課題曲になった「骨」よりは機能和声を重視して作っています。
「トニック→サブドミナント→ドミナント→トニック」という、一般的な和声の箇所もいくつかありますので、気になった箇所は分析していただけると嬉しいです。
(あまり丁寧に分析されると曲の粗が見つかってしまうとは思いますが。。)

※以下、ハイパーリンクを貼っている用語をクリックするとWikipediaの解説記事が開きます。
作曲技法的な解説ですが、いわゆる「裏コード」をいくつか利用しています。
詳細な説明は省かせていただきますが、ざっくりといえば、「ドミナントの和音(C durのG7等)の代わりに減5度上の和音(D♭7等)が利用できる」というような内容です。
裏コードの使い方については、実は「和声 理論と実習」(いわゆる藝大和声)3巻の第1章の末尾で「等響異和音」として軽く触れられています。
具体的に言えば、以下のような箇所です。

  • 8小節目はG(♭9)-5のコードでオルタードスケールだが、D♭7とも取れる。
  • 12小節目冒頭の和音は、前の和音(A7)との関係からD7とも取れるし、次の和音との関係からA(♭9)-5→D♭とも取れる。
他には、曲はじめと曲終わり(1~7小節目、65~67小節目)では、ディミニッシュスケールを使用しています。
いわゆるメシアンの「移調の限られた旋法第2番」というものです。
それから、8~9小節目の主旋律(「一夜 鉄戸の 隙より」の歌詞の箇所)は、第4曲目にも変形されてしばしば出てくる、ちょっとした循環主題になっています。
組曲全体に統一性を持たせるため、他の箇所や他の曲にも循環主題を少しだけ取り入れていますので、探してみていただければと思います。

2. 演奏上の(主に歌い手向けの)アドバイス

1. 曲全体に関して

ピアノとリズムを合わせづらい曲なので、よく指揮を見て演奏しましょう。
特に、音響のいいホールで演奏する際にはピアノの音が聞こえづらくなるので、一層注意しましょう。
リハーサルでしっかりと合わせづらい箇所を確認することが大切です。

また、全体的にフォルテの箇所以外であまり力強い音色にならないよう注意しましょう。
柔らかめの声で歌った方が、浮遊感を際立たせることができて効果的だと思われます。

それから、全体として必ずしも指定の演奏速度で演奏する必要はありません。あ
効果的だと思われる場合は、適宜速度に変化をつけてください。

2. 個別箇所に関して

2~7小節目のVocaliseは、ピアノに溶け込むような音色で優しく歌いましょう。
木管楽器のようなイメージです。
ソプラノの16分音符は特に歌いづらく難しいので、重点的に練習しましょう。
「L」の子音をあまり出しすぎないこと、半音階を正確に歌うことを心がけてください。

8~12小節目の男声のVocaliseでは、音量が大きくなりすぎないように注意しましょう。
女声の主旋律が聞こえるようにする必要があります。
これは47~51小節目に関しても同様です。

47小節目からは再現部ですが、51小節目から音が提示部と変わるので、そこから曲想も変化させましょう。
女声の主旋律は明朗に歌ってください。
そのまま音量も上げていき、55小節目の提示部の再現(半音高くなっている箇所)は、フォルテで明瞭に演奏しましょう。

59~60小節目に掛けて、男声パートのVocaliseは切らずに繋げてください。
違和感なく繋がるよう、音程と音色に注意しながらしっかり練習しましょう。

以上をもって曲の解説とさせていただきます。
皆様の演奏上の一助となれば幸いです。

山口龍彦
Author: 山口龍彦
東京都在住の会社員、作曲家

音楽を聴いたり、作ったりするのが好きです。
2019年に作った合唱曲が第30回朝日作曲賞に選出されました。

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